歯を削ることを【支台歯形成】と言います。
ですから、削られた歯を【支台歯】と呼びます。
支台歯の形には【決まりごと】があります。
理論的根拠と器用不器用で【支台歯】の美しさが決まります。
支台歯の歯型を採って、石膏を注入し支台歯模型を造ります。
この支台歯模型の上で、歯科技工士が人工歯を製作します。
正確さ、精密さ、造り易さを考慮した模型は、
歯科技工士の仕事の精度に影響します。
また、歯科技工士の歯科医への評価も変わってきます。
所謂、上手い先生、下手な先生という訳です。
そう言った意味合いで、
歯科技工士はキチンとした歯科医を内心では判っています。
私が歯科医に成り立ての新人時代の頃です。
大学病院の技工室へショッチュウ出入りしていました。
大学病院の歯科医の全ての支台歯が、技工室へ集まるからです。
どの先生の支台歯が上手いのかは、判っていました。
ご本人には内緒で、
それこそ穴が開くほど、観察していたものです。
手を使う仕事には、
どうしても上手い下手があります。
若い時分の私は、
そりゃ上手くなりたかった!
喉がカラカラになる位の、
上手さへの切望があったと思います。
当時の私の心の内の感情や表情まで、
自分のことですが、
目で見えるように覚えていますもの。
あれから30年近く経ちました。
患者さんにセットし終わった後の支台歯模型は、
産業廃棄物としてゴミ箱へ行く定めにあります。
が、
私の支台歯模型は、大勢の若い先生の元へ
養子に貰って行かれます。
ありがたいことです。
患者さんの支台歯形成をする時に、
お手本にするんだそうです。
私は、歯科治療が好きで好きで堪りません。
私の削った歯の模型が、
何処かでお役にたつのならば、
これまた歯医者冥利に尽きると感謝しています。