旧友


 仕事に就いてからの知り合いは
なにかと互いに遠慮が在るものである。

 に較べて、
大学時代の友人と云うのは
何時まで経っても
其の距離が変わらぬ処が
誠に不思議なものである。

 昨日、
群馬県のトアル医療系大学にて
解剖学の教授を務めている友人と
電話を通して
随分と長い間、
話し込んでいた。

 彼は私とは違って
大変地味な基礎医学を
自身のフィールドとして
専攻した。

 立派な選択であると
私は彼を尊敬している。

 日本歯科大学では
学・術・道を兼ね備えた
歯科医師を世間に出すを
其の使命として
学生教育に能って
既に一世紀以上の時を
過ぐるものである。

 専門職としての自覚を促す為に
様々な形で活躍中の歯科医師に
特別講義と云う形で
学生の目が開く機会を
設けている。

 今年の12月20日に
彼は母校の教壇に立つ様であった。

 卒業生としては
誠に名誉な事である。

 他校は知らぬが
日本歯科大学の校友の結束は固い。

 皆が母校のお役に立つを
当然の使命と考えて
日頃の臨床生活を送っている。

 友人は大変、喜んでいた。
この時期、君は居るのかいと
尋ねられたので、
早速、飯でも行くかい?と
相成った訳である。

 其の後の話展開の速い事が
同級生同士のよしみである。

 古町で芸者でも呼んで
都々逸でもと
雪に三味線、
みぞれに冷や酒と
今年の暮れは
柳都の情緒に
若い小僧共には
判るまい、
大人の男の時間で
締め括る結果とあいなった。