1本の歯でさえも、1色で構成されている訳ではありません。
歯の先端部分は、すりガラスのように半透明に透けていますし、
歯と歯茎の境目辺りは、若干黄ばんでいるものです。
歯の本体部分においても、ジックリ視ると、何色もの色合いが混ざりあい、重なりあって
深い色合いを帯びています。
本来、天然の歯は、中身が空洞になっています。
この空洞部分に、俗に云う神経が入っています。
その空洞を取り囲むように象牙質があり、この象牙質は決して石ころのような素材ではなく、
コラーゲン繊維の束からなる活きた組織なのです。
ですから、体液を内側の空洞の中の血管から絶えず供給を受けている濡れた組織なのです。
この象牙質を取り囲むエナメル質は、無機質の組織ですが、
ワシントンにある独立記念塔のような形をした柱状のエナメル小柱という組織が重なりあって出来ています。
この半透明のエナメル質は、柱が列なって構成されているので、
光の屈折率に特徴を持っています。
光の種類や程度によって、様々な吸収、反射の様を見せます。
種類の異なった組織構造の重なった歯の色調の深さの原因が、ここにあります。
私の診療所で、修復治療において人工歯を作製するに際しては、
単に、オールセラミッククラウンやメタルボンドクラウンと云った大雑把な種類の選択よりも、
患者さんの口許の自然感と調和するには、どうすれば良いのか!を先ず見極めてから
修復で使うセラミック素材を吟味しています。