歯科医の使命


たまには歯の話題にも触れたいと思います。

歯科と言えども、教育や研究の現場に於いては幾つかの専門分野に別れています。

大雑把に云うと、

口腔外科 :口の中の腫瘍などに対する外科治療、顎の骨折、抜歯を主に行います。

小児歯科 :成長期にある小児の虫歯の治療や予防処置を主に行います。

矯正歯科 :歯並びの治療を主に行います。

保存科  :虫歯の治療、根の治療、歯槽膿漏の治療などの歯や歯茎、歯槽骨を出来るだけ残す治療を行います。

補綴科  :被せもの、ブリッジ、入れ歯などの治療を主に行います。

放射線科 :画像診断や腫瘍に対する放射線治療を主に行います。

麻酔科  :手術の時の全身麻酔やペインクリニックを主に行います。

大学卒業後に、大学病院のそれぞれの専門科に残って専門分野の勉強する人は1割、2割位です。
後は、開業医に勤務しながら総合力を身につけるべくトレーニングを受ける訳です。

どちらの道が適切なのかは、私には申し上げる立場にはありませんが、
長い臨床生活が続く訳ですから、若い時分にはジックリと1つの専門分野に取り組んで、
そこから徐々に技術的な幅を拡げていく方が、より深い洞察力が身に付くと思います。

今流行りのインプラント治療は、上の何れかの専門分野に属する治療ではありません。
口腔外科、保存科、補綴科、麻酔科、放射線科などにまたがっての知識、技術を必要とします。

私は大学卒業後は保存科の大学院に入学しました。
歯科医人生の第一歩は、歯科保存学から始めたわけです。

ですから、その影響は大きいと思います。

私の治療は全てが歯科保存学的な見地から成り立っていると言って良いでしょう。

入れ歯の治療に於いても、骨が痩せない配慮を第一として行っています。
インプラントにしても、残った歯との調和を優先しています。

歯の神経を採ると歯が弱くなると、一般的に言われている様ですが、
これは全くの誤りでしょう。

歯の神経を残す努力は絶対に必要です。
先ずは、これが最優先するべき姿勢です。

しかしながら不幸にして神経を採らざるを得ない状況に際しては、
歯科保存学的な適切な治療を行うことで、歯が長持ちするのは事実です。

インプラントのための歯科治療ではありません。

歯科治療の使命とは、健康で快適な咀嚼機能を長く営めるように、同じく美しい口許を維持できるようにと
私は結論づけています。

そのために、私共歯科医は居る訳です。