私が歯科大生時代から大学院生の時代、
学内に
強烈な個性を持たれた
超名医が居られました。
眼光鋭い、
物静かで、
で、
厳しい診療を貫かれていました。
全てを・見透かされそうで、
学生などは、
おいそれとは・近づけない【雰囲気】が・ありました。
補綴学第2講座の岩下博美助教授です。
学生技工室に、
突然、
先生が入室された時などは、
身体が固まってしまうほどの、
殺気を・感じたものでした。
無論、
先生が入室した姿は、
背後ですから・見えません。
でも、
殺気で・瞬時に感じ取れました。
私は先生が・好きでした。
いつか自分も、
かくありたい・と、
思ったものでした。
恐い者知らずの私は、
先生を何かあるたびに、
のぞき見に・行ったモノでした。
また・お前か~。
アッチへ行けっ!
じゃま・じゃま!
そんな台詞を言いつつ、
先生は、
最後まで親切に説明して下さったのです。
先生は日本歯科大学新潟病院の初代の臨床教授です。
月日は流れ、
私が大学で臨床教授の仕事に就き、
2回目の冬を迎えます。
先日・やっと、
お昼休みができて、
古町に診療所を構える先生の処に
突然、
訪問したのです。
アポイントメント無しです。
本来であれば無礼な行いですが、
言えば、
来るな!
嫌だ!
岩下節が判っているから、
此処は新潟。
山本五十六元帥の故郷です。
トラ・トラ・トラの、
奇襲攻撃と・相成った次第。
古町アーケードの小さなビルの2階に
先生の診療所が・あります。
階段を上り、
玄関戸を開くと、
受付を務める奥様が、
眉間にシワで、
この得体の知れない奴は誰!
そんな表情でした。
奥方っ・三枝です。
ご無沙汰して申し訳ありません。
差し入れを・お持ちさせて頂きました!
瞬間、
さ・え・ぐ・さ・く・ん!
スッカリ変わってしまって、
判らなかったわ!
奥様に満面の笑みが。
何これ?
新宿高野のフルーツ・チョコレートと紅茶です。
先生の子守で大変でしょうから、
甘いモノ食べて・ストレス解消して下さい。
なぁ・にぃ・だぁ~?
ニコニコした先生が出て来られました。
ほんの数分の会話でしたが、
私の尊敬する師匠の健在ぶりが・感じ取れました。
爽やかな気分となり、
先生の診療所近くの、
ギャレットの店へと、
凍てつく外気の中、
暖かな気持ちで向かったのです。