土曜日の夜も、ゆうに10時は回った頃に、日本歯科大学の藤井教授からの電話をとりました。
普段で在れば、既に床についている私ですが、藤井教授からの予めのメールで、
読書をしながら、眠気眼を擦りつつ此の電話を待っていました。
藤井教授は全身管理科の教授で、専門は麻酔学です。
学校法人.日本歯科大学の理事で、新潟生命歯学部の教務部長を務められています。
学校を一般の会社で例えるならば、藤井教授は役員で、新潟生命歯学部の教育に関わる全ての責任を統括されている責務者と云う事になるでしょう。
彼は歳こそ私の一つ上だったと思いますが、学年は私よりも一つ下の後輩にあたります。
六年程前に、彼は教授の任に就きました。
所謂、ごぼう抜きの大抜擢と云うものです。
私は学生時代に、彼とは小さな単科大学ですから顔こそ知っていましたが、会話を交わす機会は一度も無かった様に記憶しています。
彼は真面目な優等生!私はヤンチャをそのまま形にしたような若者でしたから。
その様な私達が、何故に接点が出来たのかというと‥‥。
何時の頃のことか、それは忘れてしまったのですが、歯科医師対象にインプラントメーカーが主催した私の講演を
聞きに来られていた先生から、後日、診療所にかかってきた一本の電話からでした。
その電話の後、何回か会ってお話しを交わす機会を持っての私の先生への印象は、
彼はバリバリの熱血日本歯科マン!である事です。
あの愛好心の深さ!そして母校の学生諸君への教育への情熱!
学長先生が、彼は大変頭の切れる人間なので、彼を教育の重責に置くのが良く理解できます。
藤井先生が教務部長になられた六年前に、突然、私の診療所に電話が入りました。
ー 先生、申し訳ないが、うちの学生達に特別講演して下さい! ー
‥‥‥?
なんの話をするの?
ー 先生が毎日どんな暮らしをしてて、どんな仕事をしてて、何を考えているのかですよ! ー
そんなんでエエの?そんなんが何が面白いの???
ー イイんです!先生は変わってますから! ー
心配になった私は、思わず学部長に電話をかけました。
ー 藤井に聞いてるよ!頼むよ!タイトルは、そうだな~素晴らしい仕事.歯科治療!ヨシ!それでいこう! ー
長い間、歯科の先生方へは講演してきた私ですが、母校の学生諸君へと言われれば正直、抵抗がありました。
講演を請けた以上は、責任をもって完結させねばなりません。
それがプロの仕事だからです。
ですから、学生諸君の心に残る話をする自信がなかったのですが‥‥。
今年の10月にも、この私の講演がある事を、藤井教授からの電話で聞かされました。
これで日本歯科大学の学生は、1年坊主から6年生まで、みんなが私の講演を聞いてくれた事になります。
嬉しいもので私が校門を入ると誰かが、走って近寄って、
ー 先生!お越しですか? ー
医局へのエレベーターまで鞄を持ってくれます。
在る時は、倅と末の娘と繁華街を散策していると、会釈をされ声を掛けてくれる学生達に驚かされます。
私は心から歯科の仕事を楽しんでいます。
そりゃ、苦しい時も何度もありましたし、しんどいですよ!
でも、仕事って、そう言うものでしょ?
仕事に向き、不向きなど無いんじゃないですか?
仕事に自分を合わせる、仕事を自分に合わせると、私は思っています。
私は本当に歯医者になって良かったと思っています。
歯の魅力は奥が深すぎて、とても時間が足りません!
生まれ代わっても、また私は歯医者になりたいと思います。
17の歳に歯医者に成ろうと思ってから、日本歯科大学の門を叩いて、
ヤンチャの限りを尽くした学生時代、そして新人医局員を経て、
今まで私が何を感じて、どの様にもがいて歩いて来たのか。
私の治療を通じて面白、可笑しく、漫談風に私の講演は二時間程つづきます。
今は亡き小倉英夫学部長がつけて下さったタイトル通り
【素晴らしい仕事.歯科治療】の仕事に就けた幸運に感謝しながら、私は毎日を患者さんと向かい合っています。