私が生涯の師である今は亡きレイモンド.キム先生と初めてお会いした時に言われた言葉を時々、思い出します。
ー 普通に考えて、患者さんが歯科医に望むことは、速い、痛くない、値段が安い、綺麗にだよね! ー
なるほど、その通りでしょう!
その後の言葉は続きます。
ー その結果はどうかね?触った処、治した処は長持ちしているかね? ー
ー 治した処ほど悪くなっていないかね? ー
レイモンド.キム先生はロサンゼルスで開業医をされていた、スーパー名医でした。
我が国に於いても、先生の名前を知らない歯科医はいないでしょう。
ー キチンと治療するためには、治療の各ステップを1つづつ踏まなければならない。だから速く、速くのスピードを競っても
治療成績とは別のものだよ!
綺麗な健康的な環境を造るためには、手術が必要な場合がある。
手術をしないよりも、する方が痛いよ!
手間を掛けて治療する方が、流れ作業的な治療よりも値段は高くなる。
そう言う意味では私は、患者さんの望まない事ばかりしているが、患者さんが減ることはない。
結局、歯科治療とは患者さんが望むことよりも別な処に、鍵が在るんだと思う。
これから貴方は、その壁と生涯、戦う事になるでしょう! ー
その通りでした。
20年以上前に、先生から言われた言葉と私は、格闘を続けています。
目先の親切よりも、将来の感謝をと、私は自分に言い聞かせて臨床生活を送っています。
先日、朝のワイドショーで歯に関する話題がありました。
その日の内に、安い価格で、白い歯が入る!と云うものでした。
既製の半完成品の人工歯を、余分な処をハサミで切り取って、固めて、歯にくっつけると云う代物です。
戦前、戦後の、歯周病治療の概念が稀薄な時代に、色は金属色でしたが、同じような物がありました。
後の時代になって、散々、歯周病の原因や噛み合わせ病の原因だと木っ端微塵な位に、批評された治療方法です。
歯科界が幾ら不景気で、患者さんの獲得に躍起になっているとは言え、また同じ轍を踏むのでしょうか?
この紹介されていた方法は、テレビ眼で見ても、被せ物と削った処の境目には、大きな隙間がありました。
コンビニの握り寿司を食べても腹は壊しませんが、常日頃から私がこき下ろす回転寿司はコンビニの握り寿司よりもマシだと思っています。
この紹介されていた方法は、コンビニの握り寿司よりも酷い代物だと私は自信を持って言い切ります。
歯を失って初めて判る辛さを、決して味わうことの無いように、耳障りの良い言葉と話題に御用心!