昨日最後の患者さんは、
メンテナンスを既に20年の長きに渡り、
1月半の間隔で、
通われている76歳男性でした。
大がかりなインプラント歯周補綴治療を行った患者さんです。
無論、
インプラントも修復も問題ありません。
ただ、
神経を採った歯、
これは私の30代前半の頃の治療ですが、
根の先にレントゲン上で陰が視えるのです。
これは、
来るべき時が来たぞ!
歯の根にヒビが入ったか?
それとも、
根管充填材のパッキンが甘くなったか?
何れにしても、
対応を考えるために、
メンテナンスから【再評価】のために、
来院して頂いたのです。
診療室に入室して頂くと、
診察の前に、
歯科衛生士の手によって、
口腔内のクリーニングがなされます。
プラークの微塵もない状況で、
観察することが、
診査の第1歩だからです。
クリーニングが終わった頃を見計らって、
私は診療室へ入室します。
で、
チェアに座る患者さんの前に出向いて、
挨拶する。
これが私の診察のスタイルです。
が、
!!!
患者さんは普通に
季節柄の挨拶をなさっておられますが、
私の眼はハンターの眼へと変化し、
患者さんのお話しを聞く耳は獣の耳へと変わったのです。
チェアを下ろし、
手を繋いで、
この紳士に対して、
このような行いをした機会は1度もありません。
患者さんの方が、
戸惑っておられます。
○○さんの【かかりつけ医】は確か○○総合病院ですね?
はい、
鞄から診察券と保険証を出して下さい!
次は担当医の名前をお願いします。
じっとソファーにてお掛け下さい。
私に任せておいて下さい。
急に不安になる○○さん。
この数日、しんどかったんですよ。
瞼も朝から下がってきて。
先生、何ですか?
○○さん。
恐らくごく軽い脳梗塞かもしれません。
今日の治療は、
私の判断で中止させて頂きます。
お車でお越しですか?
いけませんよ!
運転はさせられません。
私が代行して運転させて頂きます。
助手席に乗って下さい。
宮田君!
悪いが君の車で着いてきて、
私を帰りに乗せてくれるかい?
では、
準備して下さい。
その間に、
私は○○総合病院と打ち合わせしておきますから。
時間は10分で完了しましょう。
患者さんを横に、
○○総合病院へと電話し、
25分後には到着する旨を伝へ、
先方も担当医を呼び出し、
検査等の準備を整えておくとの事。
助手席の○○さん、
ご不安そうでしたが、
ごく初期の症状ですから大丈夫!
安心させる声をかけるのですが、
所作から、
ほぼ間違いないでしょうと、
内心では、
速く速く病院へとと。
総合受付では、
話しが通っている様子に安心しました。
この際に、
公立病院のあまりにも事務的な対応に
腹が立つ機会が多いのです。
この病院の院長がシッカリされておられるのでしょう。
外来までは、
受付嬢に同行を依頼し、
私は○○さんの後ろ姿を見送ったのです。
2時間も経っていない頃、
○○さんの携帯電話からご本人からの報告を受けました。
先方、ありがとうございます。
先生の言う通りでした。
簡単な手術で済むそうです。
皆さんを待たしとるんです。
先ずは御礼をと。
この頑固親父を
私は若い頃から好感を持っていました。
速く手術に行って下さい!
あぁ先生、入院は2週間程度ですって。
退院したら、
歯、お願いしますよ!
電話を終えたあと、
私は神さまに祈りを捧げました。
ご無事でありますようにと。
先生、自ら病院までお送りしたんですか?
帰院してから、
お送りする間、
診療所は閉めていましたので、
出直した歯科関係の営業マンが驚いていました。
私からすれば、
驚くことはありません。
私の診療所の中で異変が生じた際には、
医科領域であっても、
次の処置する相手を診て、
委して良いかどうか判断する。
ここまでが、
私の職責ですから。
これが【三枝デンタルオフィス】が四半世紀、
他の追従を受け付けない理由の一つです。
私は患者さん第1主義者ですから。