大切な歯


息子と私は声も顔も瓜二つと、

人から言われます。

私には自覚はありません。

ただ、

息子にとって都合の悪い所作の何から何まで

手に採るように判ります。

それは若い時分の私と同じだからです。

思うに、

今の若者も私の時代も本当は変わらないのですが、

時代が変わった事で、

今の若者が可哀想だと感じています。

其れほど迄に、

ぎすぎすした社会になったと感じています。

若者には可能性と時間、体力が在ります。

私らの世代の方に、

若者を育てると云う自覚が欠けている様に感じています。

私が20代後半の頃すでに著明な歯周病専門医であった

アメリカのドクター.ネビンズから言われた台詞です。

手術手技に悩む私の手術写真を前に、

【成功からは何も生まれない】

【世の中を変えるのは普通の人ではない】

【私は普通の人には成りたくない】

私は大きな衝撃を受けました。

私が幸運であったのは、

多くの大人が関わってくれたチャンスが在った事です。

私の治療の特殊性の根源は、

多くの大人から得た彼らの経験の賜物を

私なりに混合させたモノである事には間違いありません。

息子には、

私は自己経験から得たノウハウを

包み隠さずに話しする様に努めていますが、

受けとる側の準備全般を観れば、

未熟さを感じざるを得ません。

父息子の関係が邪魔するのかもしれません。

子育ては、

子供が何人いようとも、

たった1度きりです。

娘への手当てが、

息子に当てはまるとは云えませんから。

血の繋がりを確実に息子へと

リレーしなければなりません。

そんな想いで、

息子との会話を配慮しつつ、

頭を抱え、

心悩ます私です。

それに比べれば、

歯の何と素直な事でしょう!

患者さんの歯は、

私の掌の上に確実に乗ってくれますので。

ですから、

私は余計に歯を、

両の掌にて、

大切に大切に温めるのです。