先週の事である。
歯科衛生士の宮田君を
初めて新潟迄、案内した時の話である。
大学の施設の案内を
偶々、通りがかった
麻酔科の大橋准教授が
引き受けてくれた。
私は末の娘と医局にて
若い先生方と雑談に講じていた。
大橋准教授は、
私の診療所で麻酔医として、
宮田君とも顔馴染みである。
その様な訳で、
宮田君は随分と丁寧な
案内を受けた様である。
午後より宮田君は
歯科衛生士の川崎律子女史の講習を
受講する事になっていた。
昼食は朱鷺メッセ近く迄
足を延ばそうと予定していたが
時間がないので、
大学近くの馴染みの定食屋と云う事で
宮田君には
気の毒ではあったが、
我満して貰うことと相成った。
席に着いたが
店の婆さん、
どうも今日は機嫌が悪い。
何時もであれば
店の前に路駐する私に
先生、よく見ておくからと
心地好く応対してくるが、
この日は何故か
ニコリともせず、
車を裏の駐車場へと
顎で合図した。
カチンときたが、
悪いのは私であるから
店の引き戸を開けて
通りへと出かけた時に、
前の方から
怪訝そうな顔つきで
私の方に向かって来る
一人の初老の男が居た。
誰だ?と訝しげながら
私の方でも
其の男の顔を
凝視した時に
お互いの口から
「三枝!」
「マスター!」
と、叫んで
互いの存在を確認したのである。
今では店じまいしてしまったが、
大学の近くに
フルールと云う名の喫茶店があった。
珈琲にだけは
拘りを持つマスターであったが、
食事の方はサッパリで、
イタリアン.ピラフなる物も
メキシカン.ピラフなるメニューも
見た目も中味も
全く同じ代物であった。
客の殆どが
大学の学生で、
どちらかと云うと
真面目では無い部類の
人間がたむろする喫茶店であった。
マスターの私とは
一回り、歳が離れている。
当時の私にとって
大人の男であった。
丁度、此の日のマスターは
近くを車で走っていたが、
前を走る車が遅いので
何時もとは違う道を
迂回して走っていた際に
香川ナンバーの路駐する車が
目に入った相である。
大学近くに香川ナンバー?
もしや?と思って
車を停めて
私が店から出た処に
ご対面となった訳である。
此の様な偶然は
何処にでも在る話ではないが、
恐らく、
神様、仏様が
今の私に必要な
出会いと思われたに違いない。