出勤し、
慌ただしくメールや書類の確認に追われていたら、
院長室をノックし、
スタッフの宮田君が緊張した趣にて入室して来ました。
???
どうしたの?
で、
彼女は一呼吸おいて、
1通の封書を両手で差しました。
???
封を開け、
おめでとうね!
宮田君の結婚式の案内状でした。
先生の祝辞を頂きたいのですが?
無論です。
先の東北大震災から帰って来た日が、
宮田君の初出勤と重なったことを思い出します。
瞼から痛々しい光景が一時も離れず、
加えて、
私の診療所の特性柄、
ほとんどの患者さんが来院を中断せざるを得ない状況となり、
患者さん皆さんの仕事上の営業にも大きな影響を受け、
必死での対応が判る故に、
私は黙って患者さんが戻って来られるのを待ちました。
診療所を開けていても患者さんが来ないのですから。
内心では、
潰れることも覚悟したものです。
宮田君も当時は、
余りの暇さに驚かれたことでしょう。
宮田君の性格なんでしょうね。
黙って、
私からの新人研修を受けていましたね。
もう一人の前から勤務していたスタッフは、
私を完全に見限っているのが肌で伝わりました。
患者さんが減ったヘボ歯医者って感じたのでしょう。
もっと効率よくとか、
健康保険の診療をしないからだとか、
先生のプライドなど棄てて治療費用のダンピングとか、
スタッフルームで勤務時間に菓子を食いながらの
半分遊び勤務にも、
私は徹底的に辛抱しました。
私はヒポクラテスの誓いをした医療人です。
私は何度も何度も、
経営の苦しさは味わって来ています。
私は一般的な歯医者にはなりたくない!と、
決意して、
歯で困った方への最後の砦で在りたいと。
歯の番人で在れ!が、
私が私自身に言い聞かせている信念です。
歯科医療が抱える諸般の問題点を、
私は国の制度のせいにしたくありません。
患者さんが、
歯を大切に考えて頂けるように
患者さんの心の扉を開いて貰うように、
時間をかけて、時間をかけて、
それが、
患者さんを治療する歯医者の仕事だと信じています。
宮田君が来てくれてからも、
三枝デンタルオフィスは、
ドンドン進化し続けています。
結婚式への案内状の綴りを眺めつつ、
そんな速かった数年のことを
思い出していました。
末永く、お幸せでありますように。