母校の絆


IMG00173 黄金に輝く広大な稲田の
越後平野の中を
ひたすら北へと
車を走らせた。

 新潟へと辿り着けば
先ずは何よりも
白竜大権化の鳥居をくぐり
道中の無事と
愚息の日頃の守護に
心から礼を述べた。

 その日は
自宅でゆっくりと
旅の疲れをとった。

 隣で末の娘とマリリンが
既に夢の最中であった。

 翌朝、萬代橋畔を
娘とマリリンで散歩した。

 ナッツで
熱い紅茶を啜りながら
午後からの講義の
最終準備をしていたら
娘から
はやくせねばお兄ちゃん達に
怒られるよと
囃し立てられ
店を後にした。

 マリリンを散髪へと、
娘を保育園へ送って
タクシーから
日本海を
眺めていた。

 今日は珍しく
遠くの佐渡が
鮮明に見える。

 大学前で
車から降りて
附属病院の建物を
見上げた。

 日本歯科大学の新潟校の
一年生に対する特別講義を受け持って
今年で五年目となる。

 プロとしての
自覚を促すための
カリキュラムで
プロフェッションと云う
科目であるそうな。

 私の時分には
その様な科目は無かったが、
確かに
医人教育には
必要かもしれぬ。

 教壇からの学徒は
誠に清々しく
将来の歯科を背負って貰いたい。

 日本歯科大学の者にしか判らぬ
厚い絆で
我々は結ばれている。

 講義を終り
中庭へ出れば
開学の師である
中原市五郎先生の像が見えた。

 無意識に姿勢を正す
自分が居た。

 青い空が頬に暖かかった。