本当の料理


誤解のないようにお願いします。

私は決して【食通】ではありません。

高級レストランよりも、下町の洋食屋の方を好みます。

高級ワインよりも、ワンカップ大関の方を好みます。

味わいから、思い出が甦るからです。

私は歯の職人です。

だからでしょうか?

いい加減な仕事をする人間が嫌いです。

もっと云えば、

なんのコダワリもない人を軽蔑します。

ただそれだけです。

不味くても、

訳が在るなら、

私は其れは其れで認めています。

今からもう35年は前の話しになるでしょうか?

雪の津々と降る夜は、

人恋しい、

酒恋しいモノです。

で、

大学の近くの【寿司屋】にて、

友人と待ち合わせと相成って。

学生ですから、始終お金がありません。

そんな私ら相手の【寿司屋】です。

店は若い主人独りで、なんとかかんとかと言った塩梅だったのでしょう。

私ら貧乏人でも、

まだ来てくれるだけマシと言ったのが本音の店だったと思います。

黒ずんだ鮪なんて、この店で初めて知りました。

寿司屋へ行って、出きれば寿司は食いたくなかったですね。

この店で、

私は初めて【あんこう鍋】を食しました。

コレは衝撃を受けました!

新潟で、初めて【甘エビ】の味噌汁を食した時も。

仰け反りました。

漁師さんのお食事かと。

私はボンボン育ちでしたから、

懐石料理で育ったようなモノなので。

すみません。

が、今では自らの手で、

これ等の料理を造ります。

一口、口に入れて、

あの懐かしい越後の風景が脳裡に浮かんでくるのです。

これが本当の料理だと、私は思っています。