生きていくために身体が栄養価を必用とするように、
脳髄も栄養素を補給せねば、人は人でなくなるでしょう。
高校時代に出会って確実に影響を受けて、其れから今でも時たま?否、しばしば頁を捲る本が数冊あります。
これ等の古い本は、既にボロボロになっていますが、
その時々で、私の鞄のなかの数冊に混じって、
私に暇つぶしの友となり、在るときは精神安定剤の役目を果たしています。
ジャンルも作家もチグハグであることが今の歳となれば可笑しく想い、
今となれば動機も包括的に理解しています。
青春時代そのものだったと。
永井荷風の墨東倚談、ふらんす物語、あめりか物語。
氏の文章の美しさは、まるで上質のワインを口腔内の粘膜全部と舌の上で味わう深さのようで、
今でも氏の技量を凌駕する作家を私は知りません。
氏の観察力と感受性の繊細さに、頭皮が突っ張った感触を覚えたことを鮮明に覚えています。
白州二郎のプリンシプルのない日本。
これは今でも、色褪せてない、紳士道のバイブルでありましょう。
遠藤周作の彼の生き方。
猿の生態研究に生涯を没頭させた一人の男の生き方を小説に。
この1冊が、何故か、商家に生まれ育った跡継ぎ息子たる私が、
歯科の門を叩く背中を押す最後の力になりました。
読書の秋です。
脳に浸み渡るほどの、栄養を注いで下さい。