紫陽花が、花瓶から溢れんほどに。

眼前のお仏壇を視界に、

院長室にて・慌ただしい合間の一服時に、

また、母からの電話を告げる携帯電話の振動が激しさを・増しています。

日中に、20回くらいでしょうか。

時々、

掛け直しますと、

ほぼ、出ては・くれません。

タイミングが合うのが・偶々で、

恐らくは、

部屋の中・懸命に歩いているのでしょう。

息子から・歩かねば、足腰が弱って、寝たきりになるぞぉ〜・と、

そんな風に・なりたくないのでしょうね。

首からぶら下げた・携帯電話なんですが、

一つのことだけに・必死で集中しているのでしょう。

どうしたん❓

すると、

運動したりや、

携帯電話を研究中でね・難しいねぇ!

で、

おはよう・あなたは、元気?

何でやねん・朝、会ったやないの。

そんな会話を・終日・繰り返すように・なりました。

人を診る仕事に就いて・35年になります。

本当の意味での【診る】事が・できていなかったことに、

気づいた・今日この頃です。

私の入れた人工の歯は、

人の・それぞれの暮らしの中で、

共に・過ごす訳です。

歯に掛けてきた人生の終盤戦ですが、

歯科医師としての・職責を・改めて再認識しています。

掌の中で、入れ歯を包みます。

指の腹で、入れ歯を探ります。

白桃を・触るように、入れ歯に触れます。

それが私の入れ歯治療の・基本でありましたのに、

もう少し足りなかった・何かが・見つかったような気がします。

母からの・褒美でしょうか。