夏の終わり


 私の朝は早い。
午前3時には起床する。
何時まで経っても眠かった
若い時分が懐かしい。

 ゴールデンリトリバーのマリリンも
体内時計に確りと、
私の生活リズムが刻まれた様である。

 今では、ベッド脇で寝ている
決して小さいとは言えない此の仔犬は、
起床時刻に、身を乗り出して
私の顔を舐め舐め、
飯を喰わせろ
散歩に連れて行けと
喧しい。

 仏壇の花の水を変へ、
水とお茶を供える間、
此の犬は
金魚の糞の如く
右から左へと
私の足元から離れない。

 ー 阿呆の倅より何とお前は賢いことか! ー

毎朝、新潟の愚息の顔を思い出しては
犬に感心しきりの私である。

 リードに繋いで外へ出た。
何気に外気が肌寒い。
思わずマリリンと伴に
駆け出した。

 私にとって朝の3時間は
大変、貴重な時である。
歯科医にとって、
大人の男として
身に付けなければならない
知識と教養の吸収の為の
手当ての時間である。

 テーブル下で転た寝の
マリリンを今度は私が起こし
診療所へと向かうために
外へ出た。

 通勤で通りを行き交う人で
喧騒の最中の市街地である。

 透き通った青い空であった。
が、鼻腔に充満してくる大気に
夏が確実に終った事を感じた。