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考えること

台風のお陰で外出もままならず、

自宅に隠っての休日を過ごせました。

この頃は、

新患の方が多く、

それも難しい症例ばかり。

若い歯科医師たちや、

製作にあたる歯科技工士さんから、

先生、いったいどうやって

ほどいて、

形に仕上げて行くんですか?

私の仕事です。

山は高ければ高いほど

挑みがいが在ります。

リスクの少ない、

よりシンプルにシンプルに、

そういう目線にて、

患者さんの資料を前に

考へ、

考へ、

糸口を見つけることが、

治療成功の決め手となります。

休日は有効に使うことができました。

保存治療の全ての治療方法にて

台風到来のなか、

海を渡って岡山県瀬戸市から

お出で下さいました。

早く帰れるように!

無理して今日お越しにならずに、

アポイントメント変更すれば良かったのに!

私は気合い充分で臨みます。

根管治療、

歯周外科、

歯肉移植、

保存治療の全ての手法を使いました。

で、

今日、

歯型採りの治療です。

ビシッ!と、

鮮明なる歯型が採れました。

ちなみに、

手前の歯はダイレクトボンディング修復です。

治療は患者さんとの共同作業

覚えていらっしゃいますか?

上の前歯のインプラントの醜さに、

涙を流された患者さんです。

インプラントが本来歯のあるべき位置に

正確に埋められていません。

これが観た目違和感満載の原因です。

インプラントは除去して、

痩せた歯肉へは

厚い結合組織を移植しました。

この症例には、

仮歯を2回使って頂いています。

今日の状態です。

仮歯ですから、

色調は勘弁してください。

最終歯はビシッと決めますから。

次回、

窪んだ部分に骨の移植を行います。

現在、

私、患者さんともに、

一生懸命、

頑張っています!

心に余裕を

今の住まいを壊して、

平屋に建て変えようと

本気で考えています。

向かいが広い公園です。

静かな環境では在りますが、

塀もないオープンな造りにしたものですから、

日曜日などは

公園で遊ぶ人の路駐に困っています。

住まいの敷地は狭くもなく、

広くもなくと云った程度です。

周りに木を植えて、

道沿いには塀を設けて、

外から家に入った犬たちが

足を洗えて、

土間で眠れる造りにしようと考えています。

そんなこんな考えて、

心に余裕をと。

日本刀

息子がスタッフの宮田君とお喋りしていました。

父ちゃんは昔は

そりゃ恐かった!

いつもビシッとスーツで決めて、

髪もビシッ!

みんな近寄るのも恐かったみたい。

ある方も仰っていたもの。

三枝先生は日本刀のような人だったと。

私ですか?

ニコニコしながら二人の会話を聞いていました。

息子が小学生の頃だそうです。

一緒に大阪市へと出掛け、

リッツ・カールトンのロビーに入ると、

ドアマンからフロントマンまで総出でお迎え。

で、

先生、今日は坊っちゃんとご一緒ですか?

その後、

小学生の息子を新地へと連れ出したのだそうな。

黒服の方から、

若!お疲れ様です!

アチコチで声をかけられるのに、

息子は仰天したそうな。

息子の飲み屋デビューは幼稚園児の頃。

8時開店が普通ですから、

7時40分頃に

店のドアを開けるのです。

ボーイさんと新人のお姉さんが、

ちょうど開店前の最後のチェックをしている頃合いです。

で、

コーナーに腰かけて、

私はジントニックを。

息子はオレンジジュースです。

そんなこんなしていたら、

何人かのお姉さんが出勤し始め、

私らの処へ来る訳です。

あらぁ!先生のお坊ちゃん!

可愛いわねぇ!

息子はお姉さんの開いた胸元を凝視します。

あらぁ!触っても良いのよ!

ウシシ!と云う嬉しさイッパイの満面の笑顔で、

お姉さんの胸を触る息子。

あらぁ、私のも良いのよ!

スケベな息子は、

次から次へと、

本来は真面目なクラブのお姉さんの胸を

触りまくって大喜び。

で、

8時を回った頃合いに、

店を後にするのが常でした。

今は丸くなったと、

みんなから言われます。

私自身も、

そう思います。

が、

筋目とこだわり処は

全くのズレはありません。

私なりの紳士道と云うのでしょうか?

私の中にある境界線を踏み込んだ無礼な輩には、

私は今では怒りこそしませんが、

スーと後退するのです。

人と人との付き合いは

本当に難しいものです。

失言と、

言ってはならない言葉とは

全く意味合いが違います。

また、

覚悟して口にした際には、

その覚悟以上の責任をとらねばなりません。

だから、

普段はニコニコしていた方が楽なのです。

そんな話しを二人にしていました。

刀は抜いたら終わりです。

鞘に入ってこそ日本刀。

ですから、

私の若い時分は、

随分と未熟者だったんだなと、

反省しています。

ただし、

刀も鞘に入りっぱなしだと、

錆び付いてしまいますから、

人知れず、

刀を研がねばなりません。

そして、

静かに鞘に納める。

人生もこれと同じです。

刀を抜かせないように、

刀を抜かずに済むように、

そういう事を意識する、

これが大切なのです。

 

幸せ者

昨夜は遅くまで飲み過ぎました。

急に息子が帰ってきたので、

嬉しかったからです。

玄関前で、

息子の姿が見えなくなるまで

見送ったあと、

テーブルに腰かけています。

安気に過ごしているように

傍目からは見えるかもしれません。

が、

私と近い距離の人は、

私の生き方をよく知っています。

我慢比べのような半生だったと。

元来、短気な質です。

しかし反面、

相当に粘り強い面も

私には相反する性格が在ります。

後者は歯科医学への取り組みから

自然に身についたものだと思っています。

ある方から問われたことが在ります。

あなたは歯科医師として生きるのですか?

それとも、

人間として生きるのですか?

と。

可笑しな事を問うものだと。

歯科医師に成りたくて、成りたくて、

この道に入った私です。

物事の全てを、

歯に結びつけて、

考へ、

悩み、

工夫して

過ごしてきた私です。

技術にテッペンはありません。

ひたすら精進。

これが技術者の宿命だと。

私の人生は1度しかありません。

私の人生は、

すなわち歯科医師として生きる。

これが自然な姿と考えます。

歯に取りつかれたと云うのが

正確な表現での私です。

人生に貴重な宝物を見つけ、

その宝物を一生懸命に研く!

私は幸せ者です。

 

父ちゃんの仕事だもの

夕方、

息子がブラリと帰ってきました。

今朝早く帰った行きましたが。

歩いて、

焼肉屋へと。

学生ですから金がないのでしょう。

肉は久しぶりだと言いながら

黙々と肉を口に運ぶ姿を観ていました。

チョッと遠くまで来すぎたねと、

歩いて帰る道すがら、

男同士の会話ができるようになりました。

テーブルの上に、

帰宅してから一緒に一杯やった

ジャックダニエルのボトル。

私の好みを間違いなく受け継いでいるようです。

昨日は忙しい1日でした。

新患の方の手当てに、

一生懸命で。

上顎全体に9本のインプラントが埋入され、

大型のブリッジで修復されておられました。

下顎の片方の奥歯部分に、

2本のインプラントが。

そこにはセラミッククラウン。

他の部分も歯は全くありません。

簡単な部分入れ歯で修復していました。

噛めない!

痛い!

臭い!

と云うのが、

患者さんの苦しみでした。

通常はレントゲン検査と血液検査のあと、

次回、

じっくりと診るのですが、

お口の中を拝見し、

【勘働き】が一瞬!

緊急性を感じたのです。

レントゲンから、

インプラントの種類は判定できますので、

ドライバーを用意して、

ブリッジを壊さないように、

丁寧に取り外します。

左奥歯部分のインプラントは全滅でした。

ブリッジと一緒に骨から簡単に取れました。

ブリッジは両端を手で押すと、

ガタガタします。

汚れきったブリッジを、

スタッフに綺麗に清掃して貰う間、

私は顔面の計測に取り組んでいました。

このような症例においては、

頭蓋骨の基準点から、

噛み合わせの基準線を決定しなければなりません。

これは総入れ歯でも同じです。

顎の型を採ったり、

色んな手当てで、

お昼休みも潰して、

3時からの患者さんまで、

診査項目の漏れがないように、

ハンターの眼のようであったに違いありません。

診療室に就いた息子が開口一番、

父ちゃん、眼が充血!

それが父ちゃんの仕事だもの。

今年後半の難症例の到来ですから。

紳士の嗜み

師匠が若い先生方に仰られていました。

自分が若い頃、

師匠から受けた躾。

これは歯科医学だけに限った内容ではありません。

トイレは違う階のトイレを使え!

よもや患者さんと並んで

用をたすなどと云う

ハシタナイ真似はするんじゃない!

電話を切る際には、

受話器を置くな!

手で、

静かに受話器受けを押しなさい。

今はこのような電話はありませんが。

他所で用をたした際には、

便座の裏まで、

眼を皿にして、

汚れとシミを拭いてから。

無論、

何十年か昔、

私も同じ台詞を聞きました。

師匠は更に言われます。

歯科医師は紳士の嗜みであれ。

言葉つかいも、

英語も綺麗な英国英語でと。

綺麗なものに触れること。

などなど。

師匠と並んで歩く際に、

私は誇らしいですもの。

癒しの人

この人を観れば、

なんだか癒し気分になるって

そういう人って居ませんか?

日本歯科大学新潟病院副院長の黒川教授が、

正にその人でしょう。

クラウン系の研究、臨床家です。

訪問診療のパイオニアであり、

エキスパートでも在ります。

天皇陛下からご拝謁を受け、

その功績を誉めて頂いた方です。

が、

決して恐い歯科医師ではありません。

ダラッと白衣を纏い、

当然、

前のボタンは開けっ放し、

白衣が肩からズレていても

気にも介せず、

私の顔を見つけると、

顔をクシャクシャにしながら

歩みより、

シッカリと肩を組んでこられ、

なぁ三枝!

どう最近?

今夜飲みに行く?

先生の一方的ペースで事は運びます。

こういうお人柄ですから、

逆に頼まれごとされても、

断れません。

中堅の医局医など私が恐くて堪らないのだそうな。

でも、

私は叱ったことはないのですよ。

保存学の新海教授から言われました。

三枝は観た目が恐い。

そうでしょうか?

これでも若い女性には人気があるんですが。

私の生真面目さが、

決して誘いにはのらず、

週間文集が恐くて恐くて堪らない。

真面目に反論する私を、

大笑いで、

そんな先輩方に囲まれています。

 

スイッチ

私が根管治療の再治療をすべきと

診断を下す症例には、

確たる根拠が

自分の中で在ります。

同じように、

諸般の観点から再度の治療はすべきでない。

その根拠も自分の中で確立できています。

これを丁寧に説明しても、

専門家でなければ、

判らないと思います。

どうなるか?

まぁ、とにかくヤってみて、

ご様子観ましょう。

このような言葉を使っていた時代が、

私にも在りました。

再度の治療を望む患者さんに、

いくら説明申し上げても、

患者にとっては、

することが最重要要素であるからです。

治療するということは、

その歯の状況が、

更に詳細に判る訳です。

先ずは、

治療の範疇を越えるまで、

前医の介入が大きく、

傷痕は手当ての限界を越えるいることを

否応なしに、

眼で、

触覚にて、

証明されてしまうのです。

治療行為よりも、

ソッと、

歯の寿命まで、

見守るべき症例も稀には在ります。

昨日の新患の患者さんの歯のなかは、

無秩序な方向性のない処置の最中に在りました。

それでも、

一筋の光明が微かに観えたのです。

ここで、

観ることから、

診ることへと、

私の脳髄のスイッチは変換したのです。