私の朝は早い。
日常の決まりごとを
一通り済ませて、
新聞を眺めながら
久方ぶりに
テレビのスイッチを入れた。
懐かしいメロディーが
耳に入ってきたので
画面に目を遣った。
NHkの地方局が造る番組であった。
熊谷市の外れの、
聖天宮の参道にある
小さな団子屋の父娘の
物語であった。
来月には他県に嫁ぐ
年頃の一人娘と、
年老いた団子職人の父であった。
朝早くから
二人は団子を造る。
娘が父の手伝いをする迄は
父は長年、独りで
同じ事を繰り返していた。
娘が父の手伝いをする様になっても
職人たる父の日常は変わらない。
が、来月からは
父は再び
独りで同じ作業を
繰り返す。
今、娘と伴に
団子を造る時間を
噛み締めたいと
此の父は語っていた。
夕刻の6時に
聖天宮の鐘が鳴る。
此れは、先代から
此の団子屋の人間が
寺から任されていた
此れも日常である。
ある時から
鐘突きは父から娘に
託された。
今日は二人で行くかと
娘に語る父の背中が
小さく映った。
普通に暮らせ。
6時になったら、
何時ものように
父は鐘をついているからと、
娘に語る父に
想わず、
目頭が熱くなった私である。
親とは其のような
生き物である。