一昨年の事である。
倅と真ん中の娘を伴って
会津まで
車を走らせた。
城巡りの好きな私である。
吹き荒ぶ雪の中を
若松城を目指していた。
元来、方向音痴で、
ナビゲーションの案内に
決して逆らう訳ではないが、
車は
同じ処を
グルグルと廻るばかりで
いっこうに城へは
近寄れない。
臆病なる倅は
気味悪がって、
ギャーギャー
喚きだす始末。
吹雪は尚の事
酷くなり始めた時、
眼前の視界が一気に広がったのである。
雪の荒野の中に
石碑が一つ。
【白虎隊終焉の地】であった。
私は車より降り、
越後長岡藩と供に
最後まで幕府への義を貫いたる
会津藩の若き戦士達に
手を合わせた。
この時、倅が車の中で
騒ぎたてていたのは
云うまでもない。
其の臆病なる倅も
今では、
戊辰の役での英霊を祀った
新潟護国神社を
好んで訪れるは
矢張、
血の為せる術であろう。