愚息の修学旅行


 新潟明訓高校に通う愚息は
宮城で先の震災に被災し、
1年遅れての
高校生活である。

 四国で育った愚息は
言葉も、感性も、生活風習も、
此の越後の国の人とは異なり、
なかなか
皆の輪の中に入れては貰えず、
独り突っ張って、
半ば焼けばちになった
時期もあった。

 越後の人は温かい。
但し、
最初は警戒心から
本音を見せてはくれないが、
一旦、仲間と認知されれば
ホンによーく面倒みてくれる
熱情の人である。

 愚息も何時か
世間に出ねばならない。

 生きた人間程
厄介なものはない。

 其の予行練習だと思い
父たる私は
見守ってきた。

 今日から
明訓高校は三泊の予定で
修学旅行へと。

 愚息には気の毒ではあるが、
広島から讃岐を経て関西へと
出向く様である。

 当地の修学旅行であれば、
此のコースは
小学校の生徒向けのものである。

 其れほど迄に
越後の国から
遠く離れた地に
此の地が在ると云う事である。

 越後の人に
西国の人の空気に触れて貰いたい。
 越後の人に
西国の街の気配を感じて貰いたい。

 確かに、愚息は
此の地の水を飲んで育ったのだから。

 京に登れば
金閣、清水も善いが、
祗園までぶらりと
足をのばして
だらりの帯の舞妓の薫りに
足を留めるのも良かろう。

 呉々も事故の無いように
気を付けて、
西国を満喫して頂きたい。