スウェーデンのルンド大学の解剖学の研究室で、当時はまだ若き整形外科医であった
ブローネマルク博士が、骨折の際の骨の治り方を研究するために、ウサギの脚の骨の中に
チタン製の自家製顕微鏡を埋め込んで、骨の中の血の流れを観察しようとしたことが、
現在の骨結合型インプラントの始まりです。
一連の観察を終了した博士は、チタン製の自家製顕微鏡を再利用しようとウサギの脚の骨から
顕微鏡を取り出そうとした処、顕微鏡は骨としっかりと結合して取り外す事が出来ませんでした。
通常、生体以外の金属は免疫反応が働いて、身体と一体化することはありません。
驚いた博士は、チタンという金属は、生体に対して炎症反応や拒絶反応を起こす事なく、
結合するという仮説をたてて再び、研究を開始しました。
これがインプラント治療の始まりです。
1960年代初頭に、チタン製インプラントの人体への初めての応用が行われました。
34歳の男性の下顎に4本のインプラントが埋め込まれました。
身体の他の場所では無く、口腔にインプラントが用いられた意義は大変大きいものだと思います。
ブローネマルク博士は大変重要な考え方を示唆されています。
インプラント治療は、あくまでも異物の生体への移植治療です。
今ではインプラント取り扱い医院が増えましたが、ブローネマルク博士の理論で治療が進められている
医院は減りつつあります。
先生の名前を冠したインプラントも今では、当時のスタンダードなデザインや材質ではなくなりました。
生体は太古の昔から変わっておりません。
骨と上手に付き合う、骨を上手く扱う治療が長期のインプラント治療の成績を左右します。